04.20 愛を胸に本を守る


『図書館戦争』先行放映地域では第2話が放送されました。お楽しみいただけているでしょうか?
  
 今回のタイトルは公式ポスターのコピーとして考案し、採用していただいたものです。これまた自画自賛ではありますが、作品の世界観を端的に表現できたのではないかと思っています。
 
 図書を守るために武装して戦うという特殊な舞台設定の作品ですが、歴史を振り返ってみれば、書物を守るために武器を手にして戦うということは決して絵空事ではありません。権力者が学問・思想を弾圧しようとするとき、かならずそこに命を賭して戦った人々がいました。
 我が国でも、表現に対する弾圧ではありませんが、命がけで本を守った過去の例があります。
 太平洋戦争末期、東京を襲い始めたアメリカ軍の空襲から本を守るため、都心の図書館の本を疎開させることになりました。日比谷図書館の場合、現在のあきる野市まで、一部木炭自動車も使用されましたが、その多くを大八車に乗せ人力で運んだそうです。若手の職員はほとんどが兵士として動員されていたため、輸送にあたったのは40歳以上の年輩の職員ばかり。何万冊という本を何日もかけて運びましたが、すべてを疎開させる前に図書館は空襲で焼け落ち、多くの貴重な本が焼失したとされています。

 本を守るということは、自分たちの文化を守ることであり、先人の記憶を守るということです。また、現在の自分たちの表現の自由を守るということでもあります。
 この作品の中では、本というのはただの紙の束ではなく、表現とそれを享受する自由の象徴として扱われています。

 現代では本は大量生産品ですから、一冊の重みというものを感じにくいかも知れません。コピーやデジタルデータにしてネット上などに保存するという手段もあります。しかしそういった文明の利器がない時代には、火を着ければ容易く燃えてしまう紙でできているがゆえに、一冊の本を守るという行為には切実なものがあったはずです。原作にはマイクロフィルム化された資料への言及もありますが、『図書館戦争』があえて紙でできた『本』にこだわるのは、そういった時代に必死で本を守った人たちへの、フィクションならではのリスペクトなのだと思います。王子様によって救われた高校生の郁が、カバーが破れているから交換しましょうという書店の好意を辞するシーンなどにも、物体としての『本』にこだわる姿勢が現れていると感じました。

 テレビアニメーションの骨子は主人公をとりまく図書隊の人々の恋愛を織り交ぜた人間模様、なのですが、その一方で本を守るということの意味に対しても、自分なりに真摯に向き合ったつもりです。ぜひ最終回までおつき合い下さい。


04.12 放送開始

『図書館戦争』いよいよ放送が開始されました!
 ご覧頂いたみなさま、ありがとうございました。
 
 立場上、我田引水自画自賛のそしりも免れませんが、私のシナリオの出来をさておいても作画の美しさ、アニメーションとしてのクオリティの高さ、そして豪華キャストの熱演は堪能していただけたのではないかと思います。とにかくスタッフの気合いの入り方はすごいです。今後の放送にもぜひご期待下さい。

 写真は例によって大怪獣シリーズのゴモラ。
 鉄道模型用に発売されているプライズのミニチュア「街並みシリーズ」を飾り込み、これまたプライズの電動戦車を配置すれば、机の上が東宝ビルトの特撮ステージに早変わり。というわけで、これは楽しいいいいいい!
 すっかりはまっておりますが、最近仕事が忙しくて、なかなか怪獣撮影の時間もとれないのがツライところです(^^;。