10.29 幻のチケット

 今さらではあるけれど、今年のプロ野球のポストシーズンマッチには大変興奮させられました。

 まずはパ・リーグプレーオフ1stステージ〜2ndステージ。松坂大輔、西口文也という日本球界屈指の好投手を連破し、最多勝&最優秀防御率の二冠王で沢村賞の杉内、さらに斉藤、新垣をうち破ったところで、もう国内にロッテを止められるピッチャーなんているのかと思ったら、自軍の守護神・小林雅英がなんと4点差を自滅でひっくり返されるという大どんでん返し(笑)。プレーオフ7試合がすべて2点差以内の大接戦、大熱戦で、果たして日本シリーズはこれ以上のドラマを見せることが出来るのかと心配したものでした。

 その日本シリーズ、結果だけ見れば4戦の合計で33-4という千葉ロッテマリーンズによる阪神大虐殺だったわけですが、決して面白くなかったわけではありません。無能な評論家や未練捨て切れぬ阪神ファンは、レギュラーシーズンが終わってから3週間のブランクがあったことで、タイガースの選手が試合勘を失っていたと声高に叫んでいるけれど、そんなことは最初から判っていたことで、それならば何故戦前にロッテ圧倒的有利と予想しませんでしたか? ほとんどの評論家はマスコミ受けを狙って阪神有利と予想していたはずです。また、日程の間隔が不利になるのならば、毎日紅白戦をやるとか、四国リーグのチームと試合をするとか、阪神にだって方法はあったはず。昨年のドラゴンズはほぼ同じ日程で、プレーオフを勝ち上がってきたライオンズと互角の戦いをしていたはずです。

 そんなことより明白だったのは、両チームの野球への取り組み方の違い、考え方の差違です。だいたい打撃投手に横手から投げさせて渡辺俊介対策とする阪神の練習を見ただけで、かなり失望しましたが、分析担当のポール・プポ氏が今シーズンの阪神の試合のビデオを全部見て、各選手の能力を洗いざらい調べたというマリーンズのやり方との間には、天と地ほどの開きを感じました。

 プレーの内容もまったく対称的でした。監督の指示をこなすことに汲々とする阪神の選手に対して、マリーンズの選手は臨機応変、自分の判断で相手が驚くような手を次々と打ってきました。例えば、第1戦の西岡の見事なプッシュバントと、第4戦最終回の矢野のバント失敗を比べれば、その違いはっきり判るでしょう。自分で最善のプレーを選び取った西岡に対して、矢野は送りバントをすることだけにとらわれていました。シリーズ初登板の小林雅英は、1点差の9回裏で明らかに浮き足立っていました。前の打者はストレートのフォアボールです。最善の策を考えるならば、ヒッティングの構えで小林を揺さぶることも出来ただろうし、それで1球ぐらいストライクを見逃したところで、矢野の有利は揺るがなかったはずです。しかし、送りバントという自分の役割だけにとらわれた矢野は小フライを打ち上げ併殺、タイガース最後のチャンスは潰えました。結果でなく、プレーへの臨み方が違う。

 バレンタイン監督は選手の打順やポジションを固定しません。98年に優勝したベイスターズがいい例なのですが、だいたい優勝チームというものはスタメンが固定されているものです。それは、たまたま優れた選手、旬の野手が8人揃っているから出来ることで、本来はそういうチームが優勝してきたのです。しかし、今年のマリーンズは投手こそ揃っていたものの、野手はスタメンが固定されていない。守りの要と言われる捕手ですら、里崎と橋本の併用でした。バレンタインは控えを控えにせず、一軍登録選手をなるべく平等に出場させることで、飛び抜けた実力を持った選手のいないチームの底上げを図ったのだと思います。たとえスター選手がいなくても、選手の力を平均的にレベルアップすることで強くなれる。この方法は、金で有名選手をかき集めたチームが勝つという従来のジャイアンツ中心主義的な考え方に対する痛烈な批判とも捉えられます。

 昨年来、日本のプロ野球は経営をはじめとするその「在り方」が論議されてきましたが、ここにきて野球の中身、グラウンド内のマネージメントに関して革命が起きている。世間では不人気などといわれていますが、どうしてどうして、ますます面白いじゃないですか。

 実は、その面白い日本シリーズの第7戦のチケットが手元にありました(もう払い戻しのために返送してしまいましたが)。マリーンズファンの友人の厚意で行けることになっていたのですが、幻のチケットになってしまいました。日本のプロ野球が変わる瞬間を、この目で、千葉マリンで見てみたかったなぁ。

 



10.13 Afternoon break

 昨日は新宿の近くで脚本の打ち合わせ。

 目的地に向かう電車の中で、私は先日亡くなられた杉浦日向子さんの「ソバ屋で憩う」を読み返していました。書いてあることをすべて鵜呑みにするわけではないけれど、この本は蕎麦好きの私にとってはちょっとしたバイブルであり、読みながらいつものように「ああ、うまい蕎麦が食いたいなぁ。でも打ち合わせは1時からだから、ゆっくり食事してる暇なんてないなぁ……。この際立ち食い蕎麦でもいいから、啜る時間があればいいけど」なんてことを考えておりました。

 JRに乗り換えようと、秋葉原で地下鉄を降りて、地上に出た途端にケータイが鳴りました。打ち合わせが2時からに変更になったとのこと。なんという天の配剤! 電話を切った瞬間から、私は出来る限りの早足で万世橋方面に向かっていました。

 万世橋を渡り、交通博物館を横目に見ながら5分ほど歩くと、そこは神田須田町。ここには『仮面ライダー響鬼』のロケ場所になっている有名な甘味処とか、藪蕎麦発祥の地(?)といわれている「神田やぶ」がありますが、私が向かったのはその少し先、歴史を感じさせる店構えと大きな提灯が目印の「神田まつや」です。観光客やお上りさんは道一本隔てた「神田やぶ」へ行くけれど、本当の蕎麦好きはこっち、という蕎麦好きなら誰でも知っている名店中の名店です。

 お昼時だから混んでいるかと思いましたが、杞憂でした。この店では相席が通常で、昼からビールを飲んでるサラリーマンの2人と、品のいい老夫婦のいらっしゃる席の端っこにちょこんと座らせてもらって、写真の天もりを注文しました。この後仕事があるからと、辛口菊正の冷やを頼みたい気持をぐっと堪え(笑)、その代わりにせいろを一枚追加。それでもうすっかり幸せな気分になってしまいました。私の普段の行きつけは池之端の藪なんですが、やっぱりまつやもいいなぁ。

 昨日は久しぶりに天気も良かったし、大変いい気分で仕事に向かうことが出来ました。まあ、こんなことはそうそうないんですけどね。


10.11 DEVILMAN LADY

 これを作ったのはもうずいぶん前です。今年の春、ちょうどここの更新が止まっているさなかですね。サンダーバードに端を発したプラモ熱が収まらない内に、懸案事項を片づけてしまおうと、余勢を駆って仕上げました。

 このガレージキットは、放送当時に発売されたもので、ものすごく欲しかったんですが、マニア人気が高くて手に入らず、先輩の脚本家の方が持っていらしたのをダダをこね(^^;)「必ず完成させる」という条件付きで頂いた物なのです。

 必ず完成させると約束したものの、やはりこういう上級者向け(?)のガレージキットは作るのが難しく、失敗するのが怖くて長年手を着けられずにおりました。この春、一念発起して製作にあたる際も、その手のマニアのみなさんのサイトを片っ端から読んで、ノウハウを調べた上、何度か食玩のフィギュアなどでテストをしてからとりかかったものです。

 露出度の高いGKですから、なんといっても肌の表現がポイントになります。最初は、ここ数年美少女フィギュアの塗装方法の定番になっている「サフレス」という方法にしようかと思いました。普通この手のレジンキットの場合、レジンに直接塗装せず、下地にサーフェイサーを吹き付けるのですが、それを塗らず、クリアーオレンジを使って透明感のある肌色を表現する方法です。しかし、いろいろ作例を見るうちに、どうやら、白いサーフェイサーを噴いた上からクリアーオレンジで調子をつける手法が私の好みに合っているらしいことが判り、そのやり方で仕上げてあります。

 一昔前、出たての頃のガレージキットと言えば、レジンが黄色くて剥離剤がボロボロ残っていて、バリや気泡が山ほどあって、下地作りだけで大変な作業だったものです。それに比べると、このレディーは夢のように出来がいいキットで、普通に組んで合わせ目を消すだけでなんの問題もなく組立は終了。塗装も、マスキングが大変だったけど、楽しんで仕上げることが出来ました。

 最近の美少女フィギュアはPVC塗装済み完成品が主流で、やっぱりガレージキットは敷居が高いのかなぁと思ったりもしますけど、こういうものって自分で作ってイメージを追求してなんぼ、さすがに造型からは無理としても、塗装で自分好みに仕上げるのが一番の楽しさだと思うのですけどね。あと、レジンキットを塗装したフィギュアには、ビニル製のフィギュアにはない重厚さやゴージャス感があると思うのだけど。私としては、完成品はなるべく買わず、時間が許す限り組み立てキットをこつこつ作っていこうと思います。


10.07 今頃になって愛・地球博総括

 万博好きを自認する私にとって、この夏の、いや今年最大のイヴェントだったはずの愛・地球博。結局一度しか行くことが出来ませんでした。

 目玉の企業パビリオンで入れたのは三菱未来館、JR東海・超伝導リニア館、ガスパビリオン、夢見る山の4カ所。あとは2時間並んでドイツ館、ドイツビールをしこたま飲み、オーストラリア館でワニのサンドイッチ、タイ館でちょっと美味しいタイ料理……もっぱら外国館は美味いもの目当てに回ってきました。

 こうして書くとそこそこ遊んできたように見えるかも知れないけど、とにかく人大杉! 夏休みに入る前の比較的空いている時期に行ったにも関わらず、人気の日立館、三井東芝館などは3時間待ち、4時間待ちで、結局入れませんでした。捲土重来を誓い、ネットでの優先予約などもあたってみましたが、受付直前から繋がらなくなり繋がったと思ったら受付終了の表示にげんなりして、とうとう2度目の万博行きを諦めました。

 そもそもアトラクション的な展示をしているパビリオンの数が少なすぎますし、長時間並んで見たショーも並んだだけの甲斐があったと思ったのはごくわずか……。少しでも見応えのありそうなパビリオンに人気が集中してしまうのは、それだけ見るべきものが少ない証拠でしょう。待ちに待った万博としては、残念ながら、非常に物足りない内容であったといわざるを得ません。大阪万博は遠くになりにけり……なのだなぁ。

 そんな中で、ちょっと感慨深かったのは押井守さんのプロデュースによる「夢見る山」のアトラクションでした。私のように学生の頃から押井さんの作品を見続けてきた人間にとっては、押井節全開でニヤニヤしてしまう……もとい、大変楽しい見世物だったのですが、ほとんどの観客は狐につままれたような顔をして、首を捻りながら会場を出ていきます。そりゃあそうでしょう、内容は「天使の卵」もかくやの敷居の高い作品で(汗)、かつ不幸なことにこのパビリオンはきわめて観客の回転がよいシステムで、つまり他の人気パビリオンからあぶれた客が「お、空いてるから一応見ていくか」というメチャ軽いノリでどんどん入ってくる構造になっているのです。訳も分からず入ってきたノンケのおじさんおばさんたちに、いきなりあんなハイブロウなもん見せたんじゃ、そりゃあ面食らうのも当たり前です(汗)。そもそもこの「夢見る山」というパビリオンは、中日新聞をはじめとする愛知県の地元資本が共同で出展しているもの。押井さんが演出したテーマシアター以外の部分は、各企業ごとにバラバラの出展をしており、展示には統一感がありません。想像するだに、テーマシアターの内容に関しては議論百出、なかなかまとまらなかったに違いありません。そこで、プランニングを担当した広告代理店の誰かが、「宮崎駿と並び称される世界的に有名なアニメーターに任せてみてはいかがでしょう?」と提案。「宮崎ハヤオ」なら各企業のエライサンたちも名前だけはみんな知っています。孫が大好きな「となりのトロロ」(ママ)とかいうアニメを作ったやたら有名なアニメ監督で、愛・地球博にも「サツキとメイの家」を出展し、開場前から大評判のアノ人です。オシイという人も、その宮崎監督と同じぐらい有名な人なら大丈夫だろう、とにかくそのオシイという人に頼んでくれ。じゃ、そういうことで。──というような顛末が容易に想像され、なおかつアトラクションが出来上がり、その人たちが初めて見たときの反応を想像すると、笑いを堪えるのに必死でした。権威主義の顛末なんてこんなものです。快哉。ビバ!押井守!

 で、さらに考えてみますと、大阪万博が開催された70年は、60年代のサイケブームやらヒッピー文化やらの残照も鮮やかな時代であり、デザインや展示内容には前衛芸術の匂いがプンプンしていました。そもそもテーマゾーンのアートディレクターが岡本太郎で、テーマパビリオンがあの太陽の塔ですからね。企業パビリオンも負けず劣らずで、エアチューブを連ねた富士グループパビリオンなど、中に入って怖かったのをよく憶えています。それでもあの時代の人々はそういう展示をワカラナイながらも楽しみ、許容していたように感じます。「なんかわけわからんかったけど、面白いものを見た」そういうおおらかな感想が許されていた時代だったと思います。現代の方が「金払ってこれだけ並んだんだから、楽しませろや」という世知辛い観客が多い……と思うのは気のせいなのかな。まあ、大阪万博は会場自体が巨大オブジェの展示場みたいなものでしたから、前衛芸術も上手くその中に溶け込んでいたのかも知れません。そういう意味でも、貧困なデザインの企業パビリオンが多く、外国館がすべてプレハブだった今回の万博には大変失望しました。

 うちの息子たちには愛・地球博よりも、その前日に行ったポケモンパークの方が好評で、なんだかなぁという感じです。下の写真は会場のささしまライブでついでに開催されていたアートオブスターウォーズ展入り口での一枚。SW展自体はすでに東京で見ていたので入りませんでしたが。


10.05 皮蛋豆腐

 ライター専業になってから、家にいる時間が格段に長くなって、ご飯を作ることが多くなりました。
 やってみると料理というのは大変面白い。美味いものを自分で作って食べるということが、これほど楽しいとは思いませんでした。

 ジャンルによって基礎があって、それさえ憶えてしまえばいろいろと応用が利いてレパートリーが広がるものなんですね。
 例えば、イタリアンならまずオリーブオイルにニンニクと唐辛子を入れて炒め、ハーブで香り付け。中華ならごま油に生姜とニンニク、味付けは半練りタイプの鶏がらスープがあれば万能、最後に水溶き片栗粉でとろみを付けちゃえば、たいていの炒め物は中華料理になっちゃう……とかね(笑)。これに酒とか醤油とか豆板醤などの調味料を組み合わせれば、もう回鍋肉でも青椒肉絲でも麻婆豆腐でもなんでもござれです。エビチリもできるよ。
 さらに手を広げて挑戦しているのがアジアンエスニック。近所のスーパーにタイカレーやトムヤムクンのもとがあってハマってるというのは以前書きましたけど、その後、市内に「アジアンマーケット」なるお店を見つけてから、さらにレパートリーが広がっています。タイスキ、生春巻き、トムヤムクンなどが今のところのお気に入り。あと、美味しい皮蛋を売っているんで、ネギと一緒に軽くきざんで生姜汁で和えて豆腐に載せ、甘辛のタレをかければ写真の皮蛋豆腐の出来上がり。ビールのつまみに最高です。さらにパクチーを載せるとグッとエスニックな風味が漂います。
 美味いタレの作り方は以下の通り。

酢     大さじ1
砂糖    小さじ1
しょうゆ  大さじ2
ごま油   小さじ1
ラー油   小さじ1
酒     小さじ1

ちょっと配分をいじって自分好みにアレンジするもよし。ぜひ一度お試しあれ。